●北海道大学大学院 修士2年 大内 昴
・参加学会
The 8th International Conference on Human-Agent Interaction
これはエージェント(ロボットやヴァーチャルエージェントを含む)と人間のインタラクションに関する最先端の研究を扱う国際学会である。
・開催地Sydney, Australia (ONLINE), 10-13th November,
・テーマHow Agents Provide Sports Motivation: Impression Ratings of Videos in Sport Climbing
・アピール点
研究内容は、スポーツ競技者のモチベーションを上げるためのエージェントを用いた提案である。これまでエージェントやロボットをコーチやパートナーとしてユーザのモチベーション向上を支援してきたものはあったが、アスリートを対象にしたものは検討されていなかった。そのため、本研究では「CGエージェントと音声による応援」、「音声のみの応援」、「応援なし」の条件下で実験を行った。その結果、スポーツ初心者にとっては「CGエージェントと音声による応援」が「応援なし」の条件より、効果的であり、モチベーションを維持させるためにポジティブな効果があることが示された。
この研究は人間とエージェントとのインタラクションにおける、エージェントの新たな活用方法を提案した点、また人間のエージェントに対する認識を明らかにした点で、意義のある研究である。
・参考URL
学会URL:https://hai-conference.net/hai2020/
DOI:https://doi.org/10.1145/3406499.3418752
●公立千歳科学技術大学大学院 光科学研究科 光科学専攻 下村・平井研 辻岡一眞
・参加学会①
33rd International Microprocesses and Nanotechnology Conference(MNC2020)
・開催
Nov. 9-12, 2020, オンライン開催(動画投稿型)
・学会の詳細
マイクロプロセス・ナノテクノロジー国際会議 (MNC) は応用物理学会主催のもと1988年より毎年開催されており、次世代技術として関心の高い新領域も積極的に取り込みながら、現在では米国のEIPBNシンポジウム、欧州のMNEコンファレンスとともに、世界への情報の発信、研究者・技術者間の深い情報交換の場として重要な役割を果たしている学会である。主な研究トピックは微細加工、半導体技術、ナノテクノロジーである。MNC 2019 (第32回国際会議)では、投稿論文数が361件、会議参加者も17カ国・地域を超えるところから435名に達している。・発表タイトルと概要
タイトル : Preparation of Cellulose Nanocrystal/Chitosan Composite Multi-Functional Films [○Kazuma Tsujioka, Yuji Hirai and Masatsugu Shimomura]
概要 : 近年、プラスチック包装材料による海洋汚染問題解決のために持続可能性と材料特性(生分解性、機械的特性、バリア性)を兼ね備えたセルロースナノクリスタル(CNC)/キトサン(CS)コンポジットフィルムが着目され研究が進んでいる。しかし、プラスチック包装材に比べナノセルロース材料は熱シール性が欠如しているという弱点があり、現在も熱シール可能にされていない。多くの研究はこの弱点の解決のためにプラスチックとの混合やコーティングを行っているが、この手法では環境流出した際に生分解されず、海洋汚染の問題が解決されない。また、CNCとキトサンを混合する際に凍結乾燥法などのプロセスを挟む必要があり、手間やコストが掛かってしまう。これはCNCを得る際に酸加水分解することでCNCがアニオンとなるため、カチオンであるキトサンと凝集してしまうのを防ぐためである。そこで本研究では既存のものとは異なる手法によって得られたCNCを用いることでこれらの問題の解決を試みた。これにより、フィルムは単純な撹拌で混合しても凝集体は生じず透明材料並みのの透明性を持つことが分かった。さらに、角質化によるシール性の付与に成功した。シール強度試験はJIS規格に沿って行われ、食品包装に必要とされるだけのシール強度が得られた。また、引張試験機による材料強度試験でもCNCやキトサンのみのフィルムに比べて引張強度や柔軟性が向上していることが明らかとなった。加えて、さらなる高機能化へ向けて微細構造の転写を行った。キトサンを含むフィルムは鋳型から構造が転写され超撥水性を示すことが分かった。この結果は超撥水性以外にも微細構造転写による機能性の付与が可能であることを示している。
・アピール点
今回の研究で特筆すべき点は、
① ナノセルロース材料ではじめて熱シール可能にし、透明性や材料強度などの特性を兼ね備えている
② 混合方法に特別なプロセスを挟まず、単純な撹拌によって混合溶液が得られる
③ 高CNC比率であるのでコスト削減につながる
という3点である。
この3点は、既存の論文に多く見られるような手法で得られたCNCではなく異なる手法によって得られたCNCを用いることで可能であることが実験結果と文献から推察された。以上の結果は概要でも述べたようにCNC/キトサンコンポジットフィルムがプラスチック代替材料として実用化されるために必要であり、今後の研究における有効な知見になり得ると考え、MNC2020にてオーラル発表を行った。
また、同様の研究テーマについて、以下の学会での発表を申し込み済みである。
第70回高分子学会年次大会 [透明性、高い材料強度、シール性を有するセルロースナノクリスタル/キトサンコンポジットフィルム] 千歳科技大院 ○辻岡 一眞・平井 悠司・下村 政嗣 (ポスター発表)
この学会は私の所属する高分子学会の3大行事の一つである。このような学会での発表に至ったことは、研究成果が高く評価されていることを示している。
●北海道大学大学院 工学院 機械宇宙工学専攻 修士2年 奥田椋太
<参加学会>
AIAA Propulsion and Energy 2020 Forum
<開催地・開催日時>
VIRTUAL EVENT, August 24-28, 2020
<テーマ>
Fuel Regression Characteristics of Axial-Injection End-Burning Hybrid Rocket Using Nitrous Oxide
<概要>
ハイブリッドロケットは相の異なる2種類の燃料と酸化剤を用いたロケットである.安全性が高く運用上の制限が少ない等の様々な利点を持つが,低推力と推力制御時の性能低下が著しいといった問題がある.
当研究室ではこの問題を克服するため,高精度3Dプリンタで製造された燃料を用いた端面燃焼式ハイブリッドロケットの研究が行われている.端面燃焼式ハイブリッドロケットは無数の微小ポートを有する固体燃料を用い,酸化剤が流れる各ポートの出口で拡散火炎が維持される燃焼形態で燃料が軸方向に後退していく機構のロケットである.先行研究では当該ロケットの酸化剤に気体酸素が用いられてきた.しかし,宇宙での利用を考えた際に気体酸素は常温で液体保存ができず,宇宙に輸送する際に重量が大きくなってしまう.そのため,本研究では宇宙での利用を視野に入れ,酸化剤として常温で液体保存が容易な亜酸化窒素の検討を行った.当該ロケットの実用化には,ロケットエンジンの燃焼室圧力と燃料後退速度の関係が必要不可欠である.単ポート燃料を用いた調査は行われていたが、複数ポート燃料を用いた調査は行われていなかったため,本研究では燃焼実験を行い,複数ポート燃料の燃焼室圧力と燃料後退速度の関係を調査した.その結果,先行研究の酸素を用いた実験で単ポート燃料と複数ポート燃料の燃料後退速度はほぼ一致することが確かめられたにもかかわらず,亜酸化窒素の場合では単ポート燃料に比べ,複数ポート燃料の燃料後退速度は5倍程度速いことがわかった.この原因を解明するべく,燃焼の可視化実験を行った所,亜酸化窒素の複数ポート燃料は燃焼中に割れながら燃え進んでいることが確認された.先行研究の酸素を用いた複数ポート燃料の実験では,各ポートの出口で拡散火炎が維持される燃焼形態である安定燃焼で燃焼が進む.そのため,酸素の場合では安定燃焼火炎の入熱によって燃料が蒸発する速度,つまり燃料の分解速度が燃料後退速度を決定している.しかし,本研究の結果から亜酸化窒素の場合では燃料の割れる速度が燃料後退速度を決定していることがわかった.そのため,亜酸化窒素の場合単ポート燃料に比べて複数ポート燃料の燃料後退速度が速くなったことが考えられ,新しい燃焼モードで燃料が燃え進む可能性が示唆された.
<感想>
この国際学会には Technical Paper の枠として参加しました.この枠は口頭発表だけでなく,フルペーパーの論文も投稿する必要があります.参加するまでの流れとしては以下になります.
募集の際にアブストラクトを提出
審査が通れば,締め切りまでにフルペーパーの論文を投稿スライドを作成し,発表内容を録音して提出
この流れを経てようやく,発表日のセッションに参加することができます.アブストラクトの提出から発表に至るまで半年以上だったため,とても長い道のりでした.初めて英語の論文を書いたので,苦労することも多かったですが,海外の論文サイトに自分の論文が掲載されたのを見て,頑張ってよかったなと達成感を感じることができました.今回の国際学会は世界最大の宇宙系の学会なので,発表者は全世界から訪れます.今年はコロナの影響で開催地のニューオリンズに行けず,オンラインでとても残念でしたが,自分の発表セッションの際には英語での議論が活発に行われ,他の国々の方々と交流することができました.普段外国の方と多くの議論を交わす機会がないため,とても新鮮で楽しかったです.自分の研究はほとんど先行研究がなく,うまくいかないことが殆どで,トライ&エラーの繰り返しでした.あの時諦めなかったからこそ,今回の学会に参加することができ,いい経験を得ることができたなと思います.この経験を今後も活かして,多くの壁を乗り越えていきたいと思います.
https://doi.org/10.2514/6.2020-3753
<参考URL>
AIAA Propulsion and Energy Forum and Exposition | AIAA
●北海道大学大学院理学院 物性物理学専攻 統計物理学研究室 修士2年
東京大学大学院工学系研究科 物理工学専攻 速水研究室 特別研究学生
山家 椋太
▪️参加学会
① 日本物理学会2020年秋季大会、2020年9月8日、「遍歴磁性体における異方的なスピン電荷結合が誘起するスキルミオン結晶」
② FYR02 QLC meeting、2020年12月22日、「Skyrmion Crystals in Centrosymmetric Itinerant Magnets without Horizontal Mirror Plane」
▪️発表内容
デバイスの高性能化の手段の一つとして、固体中の電子がもつ磁気的な性質を利用したスピントロニクスがある。スピントロニクスデバイスへ応用可能な磁気構造として、電子スピンのナノスケールの渦状構造である磁気スキルミオンが注目を集めている。磁気スキルミオンは連続変形では消せないトポロジカルに保護された構造であり、不純物や外場による撹拌に対して堅牢である。また、磁気スキルミオンは磁気情報記録媒体の高密度化を可能にするとして期待されている。
我々は、磁気スキルミオンが格子を形成したスキルミオン結晶の微視的な安定化機構を理論的に研究した。スキルミオン結晶の安定化機構に関しては、結晶構造の空間反転対称性の破れに起因した磁気異方性に着目して長い間研究されてきた。したがって、結晶構造の回転対称性や鏡映対称性等の破れに起因した磁気異方性がスキルミオン結晶の安定性に与える影響は未だ十分に明らかにされていない。そこで我々は、結晶構造に依存した磁気異方性の導出を行い、導出した磁気異方性がスキルミオン結晶の安定性に与える影響を調べた。その結果、水平鏡映対称性の破れから生じる磁気異方性が、磁場の値に応じてトポロジカル数1と2のスキルミオン結晶を安定化することを明らかにした。
本結果から、スキルミオン結晶が発現する新規物質探索に対して、導出した磁気異方性に基づき電子軌道と結晶構造の対称性の立脚した探索指針を与えることが期待できる。特に、水平鏡映対称性の破れた層状化合物等ではスキルミオン結晶の発現可能性が高いと考えられる。さらに、水平鏡映対称性の破れた結晶構造では磁気構造のトポロジカル数が2→1→0と多段階に変化し得るため、磁気スキルミオンを利用した多値メモリの実現が期待される。
●北海道大学工学院 修士1年 三輪拓実
学会名 :AIAA Propulsion and Energy 2020 Forum
日時 :2020/8/24 – 2020/8/28 (オンライン開催)
題目 :”Visualization of Fuel Regression Rate in Axial-Injection End-Burning Hybrid Rocket”
内容 :一般的に、ハイブリッドロケットの燃焼は金属の燃焼器の中で行われるため、燃料がどれだけ消費されているか(燃料流量)を直接測定することは困難である。そこで、圧力や酸化剤流量といった容易に計測が出来るパラメータから燃料流量を推算する「再現法」が開発され、先行研究で多く用いられてきた。この研究では、新形式のハイブリッドロケットである端面燃焼式ハイブリッドロケットを、燃焼器内部を可視化できる特殊な実験装置の中で燃焼させることで、可視化の結果から燃料流量を実測した。再現法を用いて予測した燃料流量と、可視化によって実測した燃料流量を比較することで再現法の精度を評価した。結果として、再現法は低い燃焼室圧力条件(0.8MPa以下)では高い精度を有すが、高い圧力条件では実際の燃料流量よりも過大に予測することを確認した。またその原因が燃焼中の燃焼効率の変化であることをつきとめた。
これに加え、査読中ではありますがAuthorとして一本、Co-Authorとして一本の論文を投稿しました。
Authorとして
学術誌:Journal of Propulsion and Power
題名 :”Visualization of Fuel Regression Rate in Axial-Injection End-Burning Hybrid Rocket”(査読中)
Co-Authorとして
学術誌:Journal of Propulsion and Power
題名 :”Fuel Regression Characteristics of Axial-Injection End-Burning Hybrid Rocket Using Nitrous Oxide”(査読中)